引っ掛けシーリングとは
一般的に天井に照明器具を取り付ける時の接続(電気的・機械的)部分と言っていいと思います。PB012803

天井取付照明器具交換時のトラブル。
いろんなご相談を受けるうち,引っ掛けシーリングに関するトラブルで,結構困ってる方がいらっしゃる様なのでupしました。

今回は角型引っ掛けシーリングに関して重点的にご説明いたします。
引っ掛けシーリングには大きく分けて古いタイプと新しいタイプがあります。
そして,古いタイプの場合電線で直接ぶら下げるペンダント型の照明器具や,直接取り付けるシーリングライトは取り付けられません。
正確に表現すると,取り付けることはできますが,落下する危険があります。
電気店の店員が,どこまで古いタイプの引っ掛けシーリングの事を把握してるかにもよりますが。
今取り付けられている照明器具を外してみることが出来るのであればすぐにわかります。
引掛けシーリング種類5
外して見た場合,端子が露出してるタイプと露出していないタイプで大きく違います。
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左の写真で,丸い穴二つは天井に止めるための木ねじの穴です。

この違い判りますでしょうか。
左の引っ掛けシーリングは,天井に取り付けた物を撮影した物ではありませんが,天井に取り付けた場合でも同じように見えます。
右の引っ掛けシーリングは,真中から電線が引き出され端子(ネジ)にからげて有ります。
電線をからげて止める部分を端子と言います。(端子:電線をとめるための部分)

天井に取り付けられている照明器具が,電線と別にチェーンでぶら下がっている場合が要注意です。

じゃ,なぜだめなんでしょう?
基本的に内線規程では
内線規程(ないせんきてい)とは、需要場所における電気工作物の設計、施工、維持、管理についての民間規格[1]。各種法令や電気設備技術基準の解釈を更に具体化し、補完するものである。電力会社が電気工事の検査・審査等をする際の基準としても用いられ、一般用電気工作物及び自家用電気工作物(特別高圧を除く)に適用される。
つまり,日本における電気工作物の技術基準です。
これによれば,
改訂条文 3205-2条 引掛けシーリングローゼットの施設。
 3.引掛けシーリングに接続する器具の重さが5kgを超えるものにあっては、ローゼットの電気的接続部に過重が加わらないようにすること。
と記されており,5Kgまでの荷重に耐えうるものが認められてるという事になります。
この電気工作物の技術基準ができる前の引掛けシーリング。
つまり古いタイプの引掛けシーリングは,単なるソケットしての機能のみを兼ね備えた(電気的接続のみを考慮した)引掛けシーリングという事になります。
照明器具をぶら下げる為の強度設計は行われていない。
それが端子露出タイプという事です。
古いタイプの引掛けシーリングに器具を取り付けたら必ず落下するという訳ではないと思ます。
しかし,落下する危険があるという事で,メーカーでは推奨していません。
これらを理解していない電気店や工事業者がいる事も間違いないので注意が必要なのです。

それぞれ比較してみましょう。
引掛けシーリング比較トータル
2点鎖線の左側が新しいタイプの引掛けシーリング。メーカーは端子露出無タイプと説明してます。
2点鎖線の右側が古いタイプの引掛けシーリング。メーカーは端子露出有タイプと説明してます。

実際はどんなふうになってるか。
照明器具の上から電線が天井に向かってのびていますが,天井部分にベージュか白っぽい色をしていて,樹脂製の長方形のブロックの様な物がついています。それが引っ掛けシーリングとそのキャップになります。
(設置場所にもよりますが,古くなっていれば黒ずんでる場合もあります)
施工後の写真ですが,参考までに
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参考:このような天井が竿縁天井と言います。
この様な天井の場合,ペンダント型の器具(写真の様な電線で直接ぶら下がるタイプか,チェーンなどで吊り下げるタイプ)が一般的です。
シーリングライト(天井ベタ付けタイプ)を取り付けることも出来ますが,専用の取付アダプターが必要になります。
アダプターは作れない訳じゃありませんので,規格外の竿縁天井等でお困りの方はご相談に応じる事はできます。

おそらく古い一般木造家屋等の場合,照明器具はチェーンで天井から吊ってある場合がこの端子露出(古い)タイプの引っ掛けシーリングの可能性が高いです。

これに該当する場合は,同様にチェーンで吊るタイプの器具か,チェーンで吊れるように照明器具を加工するか,天井の取付けてある引掛けシーリングを照明器具の荷重に耐えれる物に変える必要があります。

照明器具の各メーカーの取扱説明書や工事説明書には,この端子露出タイプの引掛けシーリングには,器具を吊り下げ不可と具体的な記述があります。
取付方法に関しては,様々な注意書きがあるので,事前にネットなどで調べて購入するのがいいと思います。


不明な場合は,このサイト
火星電気商会:Mars Studio
で相談を受け付けております。

ただ漠然と判らないという質問をされる方がいますが,このような質問には何をどう答えていいのか判らないのでお答えすることができません。
分かる範囲で結構ですので,具体的にお願いいたします。
その中でどんな情報が欲しいのか判断し,お聞きすることになるかもしれませんが。


工事(施工)方法
引掛けシーリングの交換には,最低でも第二種電気工事士の資格がないとできません。
電気工事士法で定められています。
ですから,この引掛けシーリングの交換は,電気工事店に頼むしかありません。
幸いにして私は第一種電気工事士の資格を持ってるので,工事してみました。
細かい部分は割愛しました。
引掛けシーリング工事

工事は当然ブレーカをOFFにしてから行っています。
①②は端子露出タイプの引掛けシーリングを外すまで。
③④は端子が露出していない新しいタイプの引掛けシーリングを取り付けるまでです。
写真の様に配線の余裕があって引き出せる場合は,数分で施工終了します。
配線に全く余裕がない状態の時は,天井裏でジョイント(接続)電線を引き出す必要があります。
電線を引き出す理由は,端子露出タイプは端子に被服を剥いた電線を丸くからげて締め付けて施工されています。
このからげた部分を伸ばしてそのまま使う事はお勧めできません。
一般家庭の場合電線の芯線は銅でできており1.6㎜か2.0㎜の単線が使われています。
単線とは1本ものの電線という事です。
この芯線部分に直接ストレスをかけすぎると折れる可能性があります。
つまり端子にからげていた部分を流用して使うと接触不良などの不具合の原因を招く恐れがあります。
ですからからげていた電線を切断し,新たに被覆を剥いて施工する必要があるため電線を引き出す必要があるのです。
(基本的に施工にあたって工事業者は余裕を持たせた配線を普通しますけど,今回工事した3か所中2カ所が,電線に余裕がありませんでした)
方法はいろいろありますが,条件が良ければ天井裏に登らなくても出来ます。
例えば照明器具の設置した部分が点検口からから見えてれば割と簡単です。
どのようにするかと言うと,
①引っ掛けシーリングから外した電線を点検口まで引っ掛けて引き出します。天井裏を引っ張るので他の電線に注意。
②照明器具のぶら下がっていた場所から,必要な分だけの電線を準備し,皮を剥いてIV線1本のみにし引っかかるように折り曲げテーピングし天井裏へ入れます
③それを点検口から引掛けて引きずり出します。天井裏を引っ張るので他の電線に注意。
後はジョイントするだけです。
簡単でしょう,一人でもできますが,天井裏に差し込む穴が小さいと点検口から引っ張り出す時,きつくてうまく点検口まで手繰り寄せることができないことがあります。その時は電線を入れる側と引っ張る側で二人いれば容易にできます。
様々な方法があります。
工事業者が,難しいとか,できないとかいう場合は,面倒臭くてやりたくないか,技術がないのだと判断して構わないと思います。
普通の工事業者であれば,かかるだけの金額と日数を見積りしてくるでしょう。
引掛けシーリングの交換だけであれば見積もり等しないかもしれません。
先ほども言いましたが,引っ掛けシーリングを古いタイプから新しタイプに交換するだけの作業でしたら基本的に数分で終わるのですから。
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完成です。

この端子が露出してる引掛けシーリングに器具を吊ってしまってるご家庭もあるようです。
工事店が工事を行ったのにもかかわらずです。
今のところ落下したという問題は聞いてはいません。

何度も言いますが,照明器具を販売してるメーカーは,この端子露出(古い)タイプの引掛けシーリングに器具を吊らないよう説明書に記述しています。


照明器具を購入する時。
最初に必要なのは現状を正確に説明する事。
そしてその現状をきちんと把握して,適切な照明器具を選んでくれる信頼がおける店であること。
どうしても工事が必要な時。
信頼できる工事店に頼む事。



補足
パナソニック電工のカタログから抜粋いたしました。
引掛けシーリング種類6
引掛けシーリングハンガーと言うのも一般に市販されています。
引掛けシーリング種類4
いずれにしろ,きちんとした施工が必要になります。